ランジェリーをあなたの日常スタイルに
その道のプロから学ぶスタイルコラム

Buttress & Snatchの小さなビジネス。持続可能でロマンティックなランジェリーとは？

SPLASH読者の皆さま、少しご無沙汰していましたがお変わりありませんか？

筆者の住むイギリスはコロナ規制が2022年の春先にすべて撤廃され、パンデミック前の世界にほぼほぼ戻っています。待ちに待ったホリデーを予約する人が殺到するものの、航空会社の人手不足などの理由で毎日飛行機が何十便もキャンセルというカオスも発生しています。

さて、久しぶりのコラムではかのLizzoやマドンナにもランジェリーを製作したことがあるButtress & Snatchを紹介します。 そんな大物と繋がっているのならさぞかし大手だろうと思われた方、ちょっと違うんですね。そして、このギャップがこのコラムでButtress & Snatchを紹介したかった理由です。

さっそく、ロマンティックなランジェリー紹介とともにButtress & Snatchの秘密についてロンドンからお届けしてまいりましょう！

ロンドンで始まったButtress & Snatchの小さなビジネス

Buttress & Snatchを紹介するにあたり、特筆すべきはランジェリーづくりに対する考え方です。

まず、Buttress & Snatchのバックグラウンドを少し紹介します。 ワークショップはテムズ川の北側、ロンドン北東部のHackney（ハックニー）にあります。以前は貧困地区で治安の悪い所と言われていましたが、今では若いアーティストたちが集まる話題のエリアになっています。街を歩けばユニークなストリートアートが壁のあちらこちらに見られますし、ひと時をハッピーに過ごせるインディペンデントカフェなどがあって人気のエリアにうまく変身しています。

1999年以来、このハックニーでランジェリーとスイムウェアを作ってきたのが創業者RachelでありButtress & Snatchです。

Buttress & Snatchのモットーは「小さなビジネス」です。小さなビジネスをさらに説明するのであれば「小規模で持続可能なランジェリーづくり」ということになります。

小規模で持続可能なランジェリーづくりとは？

Buttress & Snatchの小規模で持続可能なランジェリーづくりについて、もう少し紹介しましょう。これがすごく徹底していて気持ち良いくらいです。

その名も「Slow tailored Fine lingerie」、ゆったりと仕立てられた上質なランジェリーです。

すべての作品はオーダーメイドで手作りされます。外部委託は一切なし、一枚一枚が20年の経験をもつメンバーの手によって裁断されます。責任を持って調達された生地を使用、オーガニックにもこだわります。職人の手にかかるカスタム生産は創造的であり、オーダーメイドランジェリーは2週間～8週間かけて出来上がります。

職人の技が光るサスティナブルなもの、無駄を省き最大限の豊かさを実践しているのです。

Buttress & Snatchのやり方は良き時代にタイムスリップしたような印象があるかもしれません。しかし、このような方法こそ大量生産されたものをその場で購入するランジェリーとはまったく違うということになるのではないでしょうか。

顧客は自分のためだけに作られるランジェリーを心待ちにします。何事もスピーディに行なわれる現代で”待つ時間”はそれだけで豊かなものに置き換えられます。

様々な分野で先を急ぎすぎ便利さだけを求めた結果、大きな環境問題が発生している今、Buttress & Snatchの小さなビジネスが決して古いものではないと、今だからこそ多くの人が共感します。

ちなみに、このコラムを執筆するタイミングでグッドニュースが入りました。

インフラコンサルタント会社アルカディスの発表で、ロンドンがもっとも持続可能な都市ランキングで第5位になりました。世界でもっとも緑の多い都市の一つとなっていることが一因になったようですが、環境に対する高い意識があることの現れでしょう。Buttress & Snatchとメンバー達の活動もロンドンが第5位にランキングされた一役を担っていると感じます。

創業者Rachelとのコミュニケーションで分かったこと

コラム執筆において、Rachelとのやり取りはとても心地よいものでした。レスポンスも早いし、何かできることは？など声がけをしてくれる優しい人です。

Rachelは自らを”強迫的下着発明家”と自称しています。日本語にすると何か過激な印象さえ受けますが、自分のしたいことが実現できるところがロンドンの素晴らしさ。Rachelも夢に向かって一心に動きます。そして、最終的に小規模なオーダーメイド生産というところにニッチを見出します。

そんなRachelがコラムの協力依頼をした筆者に言ったのは、やはり「私の小規模で持続可能なランジェリーづくりの方法を広めてもらえれば嬉しいわ」というものでした。

Buttress & Snatchのロマンティックなランジェリー

そろそろButtress & Snatchがどのようなランジェリーをつくっているのか、興味が湧いてきたところではないでしょうか？

Buttress & Snatchのランジェリーはレースづかいのものがたくさん。自ら”Love Lace”といい、ヘリテージイングリッシュノッティンガムレース、ヴィンテージフレンチシャンティなど上質なレースを厳選、それらを丁寧に裁断することで廃棄物をゼロにしています。

ロマンティックなラインを紹介しましょう。美学を持ってモノづくりをしていることが分かります。

商品名:Queen of the Clover bra 　£162＋TAX

ため息がでるようなランジェリー。オールドゴールドカラーが優しく美しいシルクサテンのブラです。ローカットのカップ、肩まわりに柔らかなダイアファナル・シルクチュールをふんだんに使っています。ヴィンテージ感も感じるとてもラグジュアリーな作品。

商品名:Belle satin silk rose bra 　£189＋TAX

鮮やかなシャルトルーズイエローのシルクブラです。シルクは高級なデッドストック※1から仕入れ、手作業で染色されています。仕上げは60年代オーストリア製コットン・ギピュアレースとハンドメイドのシルクシフォンの薔薇という作品。

商品名:Leavers lace patchwork bra £146＋TAX

いくつもの草花パターンの生地は食器や花瓶の下に使う敷物でレトロなヴィンテージです。これらをパッチワークした楽しいブラは、美しい英国製マッドコットンアンティークリーヴァーレースで仕上げられています。大変人気で在庫が少なくなっているそうです。

商品名:Arachne French lace bodysuit £168＋TAX

最後は多くある黒のレースを使った作品から一つ紹介しましょう。このボディスーツはカップサイズとヒップサイズが選べます。ブライダル用にも使われているアイボリーカラーのレースに変更することもできます。

様々な分野と共同するButtress & Snatch

ロンドンで一枚一枚を手作りで仕上げるランジェリーづくりをするButtress & Snatchは貴重な存在と言えます。ものづくりへのこだわりだけでなく、そのデザイン性にも長年にわたって注目が集まっています。このことからも、様々な分野や人との共同が実現されてきました。

Press pageをご覧になると、Lizzo（リゾ、アメリカのラッパー・女優・フルート奏者）やマドンナといった有名なアイコン、また数々のメディアに取りあげられていることが分かります。

Press page:
http://www.buttressandsnatch.co.uk/press-1

建築家ともコラボ。身体と魂の回復のためのブラづくり

Buttress & Snatchは乳房を切除した人のためのブラや水着づくりもしています。建築家であり手術の経験者であるケイティ・マークス氏との協力体制によって、片側ブラの開発をしたのです。非対称であることは通常のブラと同じようには行かないことが分かり、仕上がるまで予想を超える長い旅になりました。 製作の実現は古き良き時代のお針子のセンスがあればできるとRachelは言いますので頼もしいですね。

チェリーレッドのピュアシルクサテン・ワンカップランジェリー。美しいカクテルドレスのような雰囲気を持っています。ケイティのためにオーダーメイドされ、募金活動のためにキャットウォークショーで着用されたのです。

このショーと当日の写真はこちらからご覧になれます

Buttress& Snatchという存在の大切さ

ロンドンで小さなビジネスを行なうButtress & Snatchについて紹介しました。

デザインは好みがありますが、Rachelたちの徹底したランジェリーづくりは今の世の中ではことさら大切な存在と言えるのではないでしょうか。

次回の英国からのコラムは、ケンブリッジ大卒の素敵な女性が立ち上げたランジェリーブランドを紹介します。またお会いしましょう！