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PORA UMIERAC
木漏れ日の家で
ワルシャワ郊外の緑に囲まれた木造の古い屋敷、その家で愛犬フィラデルフィアと静かに暮らす91歳の女性アニェラ。老いてなお美しく誇り高く生きる彼女が、ただひとつだけ遺そうとしたものとは…?
ひとりの老女の最期の日々を描いた映画 『木漏れ日の家で(邦題Pora umierac)』は、2008年に多くの国際映画祭で数々の賞を獲得しました。日本でもミニシアター系の映画館でロングランとなるほどの人気ぶりでしたので、実際に観たという方も多いのではないと思います。観たことはなくても、タイトルだけは知っているという人も多いことでしょう。でも、これがポーランド映画だということは知らなかったという人も多いのではないでしょうか。ポーランドは、『戦場のピアニスト』で有名なロマン・ポランスキー監督をはじめ、『約束の土地』のアンジェイ・ヴァイダ監督など、数多くの芸術的名作を輩出している隠れた映画大国なのです。
『木漏れ日の家で』の映像は、カラーではなくモノクローム。しかも最初から最後まで舞台はアニェラの自宅のみ。登場人物の人数もきわめて少なく、ストーリーは静かに淡々と展開していきます。アニェラの姿に自分の将来を重ね合わせながら、自分だったらどんな選択をするだろうと考えているうちに、ストーリーはエンディングを迎えます。そして、最後には「老い」や「最期」というものについて深く考えさせられます。人それぞれ感じ方は異なると思いますが、自分の中に残るメッセージや後味を楽しみたい映画です。
ハリウッド系の映画が好きな人には退屈かもしれませんが、ミニシアター系の映画が好きな人にはお勧めです。主役のダヌタ・シャフラルスカの91歳とは思えない美しさと、愛犬フィラの名演技にも注目です。
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