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Exposed Bra
海外セレブに学ぶ「見せブラ」トレンド

1913年にカレス・クロスビーが現代のブラジャーの原型を作り出してから約100年もの間、ブラジャーは「見せないもの」として存在してきました。そして今、ブラジャーは「見せてもよいもの」へと進化し、ファションアイテムへと昇華しました。海外ではExposed Bra(エクスポーズドブラ)と呼ばれる「見せブラ」トレンドの歩みと最新スタイルをひも解きます。

目次 -Contents

海外トレンド「エクスポーズドブラ」とは?

エクスポーズドブラという言葉は、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、日本語で言う「見せブラ」のことを、英語でExposed Bra(エクスポーズドブラ)と呼びます。近年注目を集めているファッショントレンドの一つで、ブラジャーを意図的に見せるスタイルを指します。このスタイルで使われるブラジャーは、古典的なファウンデーション下着としてのブラジャーではなく、そもそもファッションアイテムとしてデザインされたブラジャーであることが多く、ファッションとの相性が良いのが特徴です。

エクスポーズドブラのトレンドは、単なるファッショントレンドというだけでなく、女性のセクシュアリティの表現や自己表現の手段としても捉えられています。女性が自分の身体をどう見せるかをコントロールし、自信を持って表現することが、このスタイルの根底にあります。一方で、あくまでスタイリッシュでありながらも露出が過度にならないように、バランスの取れたコーディネートが求められるなど、ファッションとしてのテクニックも必要となります。

海外でブレイク中のブラジャーを意図的に見せるエクスポーズドブラ
海外でブレイク中のブラジャーを意図的に見せるエクスポーズドブラ

ブラジャーをシャツの下に着るのではなく上から見せたり、薄手のトップスの下に着用して透けさせたり、エクスポーズドブラは日本でも流行の兆しを見せています、海外におけるエクスポーズドブラの流行はもう少し大胆で、ブレザーやカーディガンの下にブラだけを着て、ボタンを少し開けることでブラを見せたり、ブラだけを単独でトップスとして着用することも一般的です。

ファッションとして世界中で広がりを見せているエクスポーズドブラのトレンドは、いつから生まれたのでしょうか。ランウェイからストリートまで幅広いシーンで見られるエクスポーズドブラの進化を辿ってみたいと思います。

ハリウッドが変えた、ブラジャーの価値観

見せないものとされてきた下着の概念が大きく変わったのは、ハリウッド映画の創世記。マリリン・モンローやジェーン・フォンダといった有名女優たちが、下着やブラジャーの社会的意味合いを変え、それをファッションアイテムとして前面に出すことで、女性の自由と表現の新たな道を開いたことが大きく影響しています。ハリウッドの一時代を築き上げた彼女たちは、大胆な下着姿を堂々と魅力的に披露することで、下着は隠すものという大衆の意識を大きく変えました。

マリリンモンローのセクシーな下着姿は、日本人である私たちにも馴染みがありますよね。彼女よりも以前に下着姿でスクリーンに登場した女優はいましたが、それはあくまでも濡れ場シーンでのこと。マリリン・モンローが1960年代に映画のプロモーション写真で披露した下着姿は、それらとは一線を画すものでした。ブラジャーは隠すものではなくファッションとして見せるもの。下着は自分の魅力をアピールできるアクセサリーのようなものだと大衆に知らしめたのです。

ブラジャーの価値観はハリウッドの大衆芸能により大きく変化した
ブラジャーの価値観はハリウッドの大衆芸能により大きく変化した

一方で、ジェーン・フォンダは1970年代にアメリカで始まった女性解放運動(ウーマンリブ運動)に積極的に参加し、女性の自由と表現のために声を上げることによって、下着を隠すものから見せるアイテムとしての変革を起こし、ファッション業界に影響を与えました。この運動は、後にブラジャーを含む下着を女性自身の自己表現の手段として位置づけることに繋がり、雑誌などでのブラジャーや下着広告の増加にもつながりました。

もちろん、彼女たち以外にも下着の概念の変革に貢献した女性たちは数多くいますが、ハリウッドの影響力と彼女たちの知名度が、ブラジャーがただの下着ではなく、ファッションと自己表現の手段として新たに位置づけられる重要な役割を果たしたことは間違いないでしょう。

ハリウッド女優の活躍が下着を隠すものから見せるものへと変革させた
ハリウッド女優の活躍が下着を隠すものから見せるものへと変革させた

見せブラを進化させた、ショービジネスの世界

1990年代に入ると、映画とは異なる新しいメディアとなるMTVの登場により、様々なアーティストがミュージックビデオを通じてファッションを競い合うようになります。この時代に、世界的アイコンとして名声と知名度を博したのがマドンナです。彼女のファッションはアメリカのみならず世界中から絶大な支持を得て、世界中の女性たちが憧れるセックスシンボルへと昇りつめました。

マドンナが1990年代に彼女のツアーで着用して有名になった、三角形で先の尖ったブラ(円錐形のコーンブラ)は、ご存知の方も多いでしょう。ジャンポール・ゴルチエによってデザインされたこの衣装は、下着とファッションのみならず、下着とアートの境界をも押し広げるものであり、ブラジャーを性的な象徴としてだけでなく、女性の自立と自己表現の力強いステートメントと昇華させました。下着業界のみならず、ファッション業界に大きな影響を与えたマドンナのこのMTVは、見せブラトレンドの発展において重要な役割を果たしました。

2000年代に入ると、見せブラはショービジネスの世界で存在感をさらに大きく発揮するようになります。アカデミー賞、グラミー賞、カンヌ映画祭など、様々なレッドカーペットイベントで、スカーレット・ヨハンソン、シドニー・スウィーニー、ナタリー・ポートマン、シャロン・ストーン、レディー・ガガ、ブリトニー・スピアーズなど、数えきれないほどのセレブリティが、個性的な見せブラスタイルで登場するようになりました。意図的にブラジャーが見えるような工夫がされたドレスが人気になるなど、見せブラトレンドはますます加速していきました。

ジャン・ポール・ゴルチェ(Jean-Paul GAULTIER)がデザインしたコーンブラはマドンナを一躍有名にした。(ドイツ、ミュンヘンのライシュタディオンにて)
ジャン・ポール・ゴルチェ(Jean-Paul GAULTIER)がデザインしたコーンブラはマドンナを一躍有名にした。(ドイツ、ミュンヘンのライシュタディオンにて)

海外セレブに学ぶ、エクスポーズドブラ最前線

マドンナ、レディー・ガガ、スカーレット・ヨハンソンなど、過去から現在に至るまで数々の有名人が、ランジェリーを隠すことなく美しさを前面に出すことで、エクスポーズドブラの新たな道を切り開いてきました。彼女たちのスタイルは、ファッショントレンドを牽引し、ランジェリーを堂々と魅せることのできる新しい文化を築き上げてきました。

海外セレブたちが魅せる見せブラスタイルは、真似したくなるようなアイデアの宝庫と言えます。例えば、ベアトップのドレスやビスチェ、オフショルダートップスの下からブラの上部を見せるスタイル。スカーレット・ヨハンソンやロージー・ハンティントン、シドニー・スウィーニー、ナタリー・ポートマンなどの女優たちもレッドカーペットで披露したことのあるスタイルで、ドレッシーで洗練された印象になります。

2023年カンヌ国際映画祭でのロージー・ハンティントンはスパンコールのブラをエクスポーズドしてレッドカーペットをわかせた。
2023年カンヌ国際映画祭でのロージー・ハンティントンはスパンコールのブラをエクスポーズドしてレッドカーペットをわかせた。

レディー・ガガに代表されるマニッシュな見せブラスタイルも参考になります。オーバーサイズのスーツジャケットの下に、デザイン性の高いブラジャーを合わせることで、パワフルかつセクシーなルックが完成。ジャケットを羽織る際に、わずかにブラのレースが見えるようにすることで、上品ながらも大胆なスタイルに仕上がります。オフィスカジュアルからイブニングスタイルまで、幅広いシーンで活躍し一般的にも取り入れやすいスタイルです。

スカーレット・ヨハンソンは、2023年にフランスで開催された第76回カンヌ映画祭でのレッドカーペット。
スカーレット・ヨハンソンは、2023年にフランスで開催された第76回カンヌ映画祭でのレッドカーペット。

ブリトニー・スピアーズのように、カルバンクラインなどスポーツ系ブランドのブラのロゴを見せたり、ロングブラのレース部分を見せるスタイルも、比較的真似しやすいでしょう。このようなスタイルは「ミッドリフスタイル」とも呼ばれ、ミッドリフトップやミッドリフジャケットといったお腹を出すスタイルから下着を見せるのが特徴。ブラジャーではありませんが、miu miuが2024 S/Sコレクションのランウェイで見せた、腰履きパンツからショーツのウエストを見せるスタイルなども話題となりました。ストリートでも合わせやすいスタイリングで、セレブのプライベートスナップなどでも多く見られます。

海外セレブリティたちが魅せるエクスポーズドブラのスタイリングは、日本でも真似できそうなものが豊富にあります。興味がある方は、海外のファッションサイトなどをチェックしてみると良いでしょう。

パリファッションウィーク中のMIU MIU SS22ランウェイでのミッドリフスタイル。
パリファッションウィーク中のMIU MIU SS22ランウェイでのミッドリフスタイル。

日本と海外の「見せブラ」スタイル比較

日本でも若い世代を中心に、エクスポーズドブラの文化が浸透し始めています。海外のようにブラジャーを露骨に見せるファッションは多くありませんが、シアー素材やレースを用いてランジェリーを控えめに見せるスタイルや、シャツやタンクトップの上にブラジャーを重ね着するスタイルなど、露出を控えた上品な見せブラスタイルは日本でも流行しています。日本人が好む控えめな見せブラスタイルは、海外ではすでに10年以上前に流行しており、ようやく日本でもエクスポーズドブラの価値観が受け入れられるようになったと言えるでしょう。

レーシーでエアリーなシアー素材をトップに使い、デザイン性の高いブラジャーを透けさせるスタイルは、肌の露出が少ないことから、若い世代に限らず幅広い世代から受け入れられています。特にここ数年は、肌に密着するボディーコンシャスなチュール素材からオーバーサイズのオーガンジー素材など、様々なタイプのシアートップスが続々と登場しています。ヘルシーな抜け感を演出できるこのスタイルは、今後もファッションとして人気が継続しそうです。

日本でも若者を中心にエクスポーズドブラのファッションが人気を集めている
日本でも若者を中心にエクスポーズドブラのファッションが人気を集めている

トレンドのオーバーシャツにレースのビスチェを重ねたり、カジュアルなTシャツやタンクトップの上にブラジャーを着けたり、下着を服の下ではなく上に着るスタイルも日本では流行しています。シアースタイルよりもさらに肌の露出が少なく、シンプルな服装でも手軽にセクシーさとおしゃれ感を加えられるとして、幅広い年代に人気のスタイルです。

自己表現としての価値を大切にしながらも、他人がどう感じるかということへの配慮も大切にし、TPOに合わせた見せブラスタイルを楽しめるのは、周囲への気配りや協調性を大切にできる日本人ならではと言えるのではないでしょうか。ファッションとしての多様性と個々の価値観、他社との関係性まで配慮したバランスの取れた、日本独自のエクスポーズドブラ文化。これからファッションスタイルとしてどんな広がりを見せるのか楽しみです。

女性のセクシュアリティの表現や自己表現の手段として、ファッション業界で広がりを見せるエクスポーズドブラ
女性のセクシュアリティの表現や自己表現の手段として、ファッション業界で広がりを見せるエクスポーズドブラ

女性たちが自由に自己表現することを楽しむようになり、下着がファッションの一部として認知され始めたことで、女性の自己表現の方法のひとつとして普及し始めたエクスポーズドブラ。今後はSNSの更なる普及により、ファッションの多様化はますます加速し、新しいトレンドが形成されていくことでしょう。今後もトレンドの動向が見逃せません。

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