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1990年代のサブカルチャーであるグランジファッションが、いま若きZ世代を中心に再び注目を集めています。グランジとランジェリーという対照的な要素を組み合わせることで生じる化学反応と、そこから創造される新たなランジェリーファッションの魅力に迫ります。
目次 -Contents
反抗の美学から生まれたグランジファッション
グランジファッションとは、1990年代初頭に流行したファッションスタイルで、シアトルの音楽シーンから生まれたサブカルチャーの一部です。アメリカ英語で「汚い」といった意味合いを持つgrungy(グランジー)という俗語が語源で、一見汚く見える古着などをシンプルに着崩したストリートスタイルのことを指します。
グランジの先駆者と言われる伝説のロックバンドNirvana(ニルヴァーナ)が着ていたファッションが、当時の若者の間で大流行し、世界中でグランジ・ムーブメントが巻き起こりました。彼らのファッションをアメリカのファッション誌が「グランジファッション」と名づけたことで、グランジは90年代のカウンターカルチャーの象徴となりました。
90年代のグランジ・ムーブメントは、ニルヴァーナをはじめ、Pearl Jam(パール・ジャム)、Soundgarden(サウンドガーデン)、Alice in Chains(アリス・イン・チェインズ)など多くのロックバンドが牽引しました。社会に対する不満や苦悩を強く表現する「反抗的なサウンド」は、グランジという音楽ジャンルに分類され、彼らのファッションはグランジファッションと呼ばれるようになります。
社会に迎合しない、無理をしない、本質を大切にする、といったメッセージ性が強く、ファッションもその哲学に基づいています。ボロボロの古着を着崩し、反抗的なサウンドを盛り上げる退廃的なファッションは、反骨の美学を象徴するものとして、アメリカのみならず世界中で一大ムーブメントとなりました。
ハイブランドを変えたグランジ・ムーブメント
90年代のグランジムーブメントの波は、カジュアルな古着とは対照的とも言えるハイブランドへも波及し、多くのハイブランドでもグランジの要素が取り入れられました。例えば、Marc Jacobs(マーク・ジェイコブス)は、1993年のPerry Ellisコレクションでグランジスタイルを織り交ぜで、ファッション界に衝撃を与えました。
Anna Sui(アナスイ)は、グランジの女王と言われたミュージシャンCourtney Love(コートニー・ラブ)を彷彿させるような、ロマンティックで女性らしい要素を加えた独自のグランジスタイルを提案。Saint Laurent(サン・ローラン)は、当時のクリエイティブディレクターであったエディ・スリマン(Hedi Slimane)が、カリフォルニアグランジの影響を受けたコレクションを展開し、クールで洗練されたスタイルを打ち出しました。
近年では、Bottega Veneta(ボッテガべネタ)が、2023年春コレクションでグランジの要素を巧みに取り入れつつも、洗練されたシンプルでありながら、エッジの効いた現代的なグランジスタイルを披露。
もともとは「汚い」「不潔」という意味から生まれたグランジは、多くのデザイナーたちによって世界的ファッションカルチャーとして認められ、スタイリッシュな美しさを融合させた新たなファッションへと昇華していきました。
グランジへのトレンド回帰とランジェリー
いま、TikTokやInstagramなどのSNSにおけるインフルエンサーを中心に、グランジ回帰のファッショントレンドが巻き起こっています。日本でも、Z世代の若者を中心にグランジ要素をファッションに取り入れる若者が増加しており、まさに第2のグランジムーブメントが巻き起ころうとしています。
特に、Z世代の間で流行しているグランジファッションはフェアリーグランジ(Fairy Grunge)とも呼ばれ、妖精のような幻想的で繊細な雰囲気とグランジの粗雑で無秩序な美学を融合させた、独特な美学を持つスタイルが特徴です。
フェアリーグランジは、フローラルやレース、シフォンなどのフェミニンで繊細な素材に、ダメージ加工されたデニムやヴィンテージ風のアイテムを組み合わせるのが特徴。グランジに欠かせない重ね着も重要な要素となっており、軽やかなシフォンドレスに古着風のアウターを重ねたり、Tシャツの上にレースのキャミ―ソールを重ねたり、対照的なテクスチャーのレイヤリングで無造作な印象を与えます。
ただ、90年代のグランジと最も異なるのは、フェアリーなフェミニン要素が欠かせないという点です。レースのキャミソールやスリップ、お腹が見えるブラレットやビスチェなど、アクセサリーのように華やかな要素を持ち合わせたランジェリーは、古着やヴィンテージ服とのレイヤリングにも好相性で、グランジファッションにおいて稀有な存在感を放ちます。
フローラルやレース、シフォンなどのフェミニンで繊細な素材が多く使われたランジェリーは、まさにフェミニン要素が求められるフェアリーグランジのスタイリングには最適なのです。実際に、ランジェリーをファッションに取り入れたグランジスタイルは、SNSなどでもよく見かけるようになりました。
ちなみに、グランジファッションの色合いは、黒や灰色、ダークグリーン、バーガンディといった暗めのトーンが中心です。派手な色は少なく、シンプルで落ち着いた印象を与える色使いが特徴です。
フェアリーグランジもその流れを踏襲しており、主にパステルカラーやニュートラルなアーストーンが使用されます。これにブラック、グレー、ダークグリーン、ディープパープルなどの暗めの色がアクセントとして加わることもあります。
TOKYO発!グランジランジェリーの進化
いま、世界中からも注目を浴びているTOKYO原宿のストリートファッション。2018年から毎年のようにVogueがTOKYO Fashion Week でのTOKYOストリートの特集を組み、世界のファッション界でも話題となっています。
E-girl、テック、アニメ、スケーター、ロリータ、和服、ヴェイパーウェイヴ、ゴシック、フェアリー、パンク、グランジ、 Y2K。それらを自由な感性で巧みに掛け合わせて生み出される、ボーダレスなTOKYOスタイル。そんなTOKYOスタイルにおいても、グランジ回帰のムーブメントを見ることができます。
その典型とも言えるのが、ファッショニスタから注目を集めているアパレルブランドのSOEUR tokyo(スール―トーキョー)。アウターにもインナーにもカテゴライズされてないoverwear(オーバーウェア)という新しいジャンルを提唱し、2024年にパリで開催されたランジェリーの国際見本市Salon International de la Lingerieでも、Exposed Brands(注目のブランド)として紹介されました。
SOEUR tokyoのコレクションは、フェアリーでありながらグランジの雰囲気を醸すラインナップが多くラインナップされています。
デザイナーのSAKURAさんへのインタビューでは「特別にグランジを意識したつもりはないけれど、私のインスピレーションや創造には確かにグランジの要素が含まれているかもしれない」と語っていました。言葉にはしなくても無意識の中に存在する美学。グランジとはそういうものなのかもしれません。
ちなみに、SPLASHでも2024年ウィンターシーズンから、SOEUR tokyoのアイテムを取り扱う予定です。生産数が限られた希少なランナップを皆様にお届けできることを、今からとても楽しみです。
テイストMIXで広がるグランジコーディネート
フェアリーに限らず、モード、フェミニン、パンク、ゴシックなど、様々なファッションジャンルにグランク要素をグランジ要素を組み合わせることで多方面へと広がりを見せるグランジファッション。
最後に様々テイストMIXから生まれるグランジーなファッションをご紹介します。どれもランジェリーをコーディネートにランジェリーをさりげなく加えているので、斬新なランジェリーファッションとしてもお楽しみください。
1.パンク系グランジスタイル
パンクとグランジはロックと言う共通の音楽を通じて社会のアンダーグラウンド的な反骨心を共有するスタイル。黒を基調としたコーデは、レザージャケットに厚底のブーツ、破れた網タイツにシースルーのランジェリーをレイヤードしてフェミニンなパンク風にアレンジ。ガーターベルトなどのアイテムを合わせるとロック色の強いパンク風グランジスタイルが完成します。フェスやコンサートのアクティブな環境にぴったりです。
2.ゴシック系グランジスタイル
ゴシック系ファッションとは、黒を基調としたダークでミステリアスなファッションのことで、音楽に影響を受けたファッションであるという点においてグランジと共通しています。シースルーのスリップドレスやベビードールなどで肌を露出しつつ、足元にはハードなエナメルパンツ、ヘアスタイルは重めのダウンヘア、暗めの赤リップで怪しげな雰囲気を漂わせれば、小悪魔風のゴシック系グランジスタイルの完成です。
3.サイケデリック系グランジスタイル
1960年代のヒッピー文化と共に流行したサイケデリックは、平和と自由を求める象徴として広がりました。グランジとはカラーパレットが異なるものの、ゆったりしたシルエットを基調とするなど共通点もあります。
センシュアルなシースルーのハイネックブラに、サイケデリックな原色のジャケット、グランジ―な古着パンツを合わせれば、サイケデリック風のグランジ・ランジェリーファッションの出来上がり!グランジといえば暗めトーンのカラーパレットが基本ですが、原色や蛍光カラーの色遣いや抽象的なプリント柄を取り入れることで、サイケデリックなグランジのスタイルを楽しめます。
グランジとランジェリーの対照的な出会い。そこから生まれる予測不能なファッションの化学反応。個性を強調する現代において、従来のファッションルールを打ち破る新たなアプローチとして、グランジの形はどんどん進化していくことでしょう。皆さんも是非、グランジファッションにランジェリーの要素をプラスしてあなた流のグランジランジェリーを楽しんでみてください。
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